仙台について港内を走る。車の窓から見える風景は復旧が進んでいて津波の影響は分からないほどだ。何らかの理由でまだ破壊されたままの倉庫が少しあって、それが突然現れる。その差がより強烈に心を揺さぶる。外壁の鉄板はレースのカーテンのように引きちぎられて無惨な姿になっている。旭川新聞に載っていた石巻市の「雄勝地区」を目指す。海岸近くを通ると河口付近は津波の被害で船が田んぼの真ん中に置き去りにされたままで、非日常の異様な光景だ。石巻に入ると何事も無かったような街並が並んでいる。もう7か月も経つので被災の跡が見えないほどに復旧が進んで居るのかと思った。でも違った。風景が突然変化した。破壊された街並が現れて人っ子一人いない世界が突然出現したのだ。津波は平等に襲ってくるのではなかった。土地の高低、防波堤になる林や森、大きな建物があるかないかで破壊され方が違うのだ。考えてみれば当たり前だが、数100mの違いで何も被害が無い場所と壊滅的に破壊された場所ができる。まさに運としか言い様が無い。高い場所では日常の生活が続き、低いところは全て破壊され、人は居なくなって殺伐とした別世界がになっている。車を止めて写真を写そうと思うが、撮影しても良いのだろうか、と被害を受けた人たちの事を思うと胸がどきどきする。いったい自分は何をしに来たのだ、と自問自答しながら心の中で済みませんと謝りながら恐る恐る遠慮がちにシャッターを切った。
コメント