きりがないので最終回にします。
巨大な船が陸地奥まで運ばれて整然と立っている姿は何と表現したらいいのだろう。津波が驚異的な破壊力でここまで運んで来たとは聞くものの、感覚的には理解できない。巨大なクレーンで釣り上げて運んで来たとしか考えられない。いくら津波の力が強いと言ってもこの巨大な船を運んで来ることは不可能だとどう考えても感覚が拒否する。これからどのようにして復旧していくのだろうか。途方に暮れるとはこの事か。破壊され土台しか残っていない土の上に花と果物が添えられていて、身内の供養の跡が忍ばれ心を揺り動かされる。車が余り通らない道ばたでお湯を沸かしインスタントラーメンを食べながら、もっと奥に行ってもっと多くの惨状をこの目に焼き付けていこうと思いながら時計を見るともうフェリーの時間が迫っている。仙台についてから夕食の時間と市内の渋滞の可能性も考えて余裕を持って出発しなければならない。今回の旅はここで終了にして帰路につく。
地元の人は多くの人にこの惨状を見に来て欲しいという気持ちに変化して来ていると聞いて少し安心して記録して来たが、今回の記録を写真展を開いて多くの人に見てもらう機会を作りたいと考えるようになって来た。それにしても地震による被害があまり目撃されなかったので揺れは小さかったのかと思ったが、聞いてみると震度6強だったと言うから、日本の建築技術の素晴らしさを再確認する事ができた。津波さえ来なかったら、放射能さえ無かったら、地震だけだったらこれほどまでに打撃を受けなかったという悲痛な叫びが聞こえてくるようだった。